夏鳥の越冬地とコーヒー農園

Photo: Gladys Maximo

 日本で見られる野鳥は約600種いて、その多くが渡り鳥です。なかでも春から夏にかけて日本でヒナを育て、冬を東南アジアで過ごす渡り鳥は「夏鳥」と呼ばれ、姿や鳴き声の美しい小鳥類が多いので、バードウォッチャーには人気があります。しかし東南アジアの森林は、伐採やアブラヤシのプランテーション、農地への転換などにより減少を続けていて、夏鳥たちが越冬できる環境は減少しています。

 いわゆる普通種と呼ばれる数の多い種は、越冬地でも広い範囲に分布しています。そうした種の保全に適した対策のひとつが、生息地の自然環境を維持しながら農業を営むことです。夏鳥が越冬する赤道近くはコーヒーの生産地で、コーヒーは直射日光に弱いために、高木の日陰で育てられるので、ある程度の樹林を維持したまま生産することが可能です。森林を残したまま農作物を育てる手法はアグロフォレストリーと呼ばれ、コーヒー以外にも果実、マメ、イモなど多様な作物が入り交じって栽培されることがあります。

山頂まで野菜畑になっている山。ルソン島中部ではこうした光景が多く見られる。

 私たちはフィリピンとインドネシアのアグロフォレストリーのコーヒー農園で野鳥の調査をはじめています。これらの農園の周囲では森林が畑に変わってしまいましたが、コーヒー農園では多くの野鳥が生息することが分かってきました。このような環境で育てられたコーヒーを選んで購入することで、渡り鳥の越冬地を守ることができます。

インドネシアのジャワ島中部にあるアグロフォレストリーのコーヒー農園

この農園で越冬したムギマキ
(撮影 Sam Ade 18)

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